【京アニ放火事件】「遺族の同意なき実名公表」という悲劇はなぜ起きてしまったのか

オピニオン
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こんにちは、オノユウ(@yumaonodera_)です。

多くの尊い命が失われた京都アニメーション放火事件。

35名もの命が無残にも奪われてしまい、その遺族は今もなお、悲しみや苦しみと向き合っていると思います。

 

その後、被害者の実名を公表の理解を求めて、京都府警は遺族に対し説明をしてきました。

そして35名のうち10名の遺族は実名の公表を承諾したものの、残り25名の遺族は実名の公表を承諾していませんでした。

そんな中、今回京都府警は被害者遺族の同意を得ない形で、強引に事件の全被害者の実名公表に踏み切ったのです。

今回は、実名公表の問題点と、京都府警に実名公表を迫ったマスコミの思惑について解説します。

京アニ被害者の実名公表は何が問題なのか

まず、実名公表の影響について考えてみましょう。

 

今回、京都府警は、実名公表に同意していない被害者25人の、実名および身元の公開に踏み切りました。

身元の公開対象は、府警記者クラブに所属している報道各社のみに伝えられたとのことです。

 

実名報道によって考えられる影響は下記のとおり。

  • 身元を知っている府警記者クラブの記者や報道陣が家に押しかける
  • 身元を知らない週刊誌などの記者が、実名から住所の特定する
  • 被害者の顔写真を勝手に流用され、報道される

 

身元を知っている記者は直接取材に行くことが可能になりました。

今後、事件被害者の住所をリスト化し、手当たり次第、家を一軒一軒訪ねていくことでしょう。

 

また、府警記者クラブに属していない記者にも住所が特定されることでしょう。

実名から住所を探し出すことができるほか、府警記者クラブに所属している関係者からこっそり聞き出すことだってできるはずです。

つまり、今回の実名公表が起きてしまったことで、

事実上、被害者遺族の住所が不特定多数の人にバラまかれてしまったといっても過言ではないのです。

 

あなただったらどう思いますか?

「今の気持ちはいかがですか?」

「犯人をどう思いますか?」

こうやって見ず知らずの人がカメラを持って、家に取材に押しかけてくるとしたら。

 

教えてもいない人に自宅がバレて、ハガキが勝手に投函されていたり、

インターホンが鳴らされたと思ったら、全く見ず知らずの人がカメラを持ってやってくるわけです。

 

さらに今回の実名公表によって、被害者の顔写真も流用されてしまい、全国放送されてしまいました。

悲しみに向き合っている最中、テレビをつけたら、自分の娘や息子の顔写真が勝手に使われてテレビに放送されていたらどう思いますか?

実名公表は、被害者の尊厳と、被害者遺族の意向をないがしろにしたものと言えます。

 

今回の京アニ被害者実名公表は、まさに「悲劇」といっても過言ではないのです。

被害者の実名公表をするマスコミの声明

ただ、一方的に意見を言っても仕方ないので、マスコミの意見も聞いてみましょう。

NHKの声明について

NHKは事件の重大性や命の重さを正確に伝え、社会の教訓とするため、被害者の方の実名を報道することが必要だと考えています。そのうえで、遺族の方の思いに十分配慮をして取材と放送にあたっていきます。

引用:NHK NEWS WEB 

「事件の重大性や命の重さを正確に伝え、社会の教訓とするため…」と書いてありますが、、、

皆さんにお聞きします。

被害者の実名が公表されなければ、あの痛ましい事件の重大性や命の重さ、伝わりませんか?

事件の重大性は、実名を公表しなくても誰もが分かっているはずです。

 

また、

「遺族の方の思いに十分配慮をして取材と放送にあたっていきます。」とありますが、

実名公表してしまえば、配慮のない報道陣が取材に押しかけ、配慮のない報道機関が記事や放送として取り上げるんですよ。

そのことすら想像できないのだとしたら、公共放送を名乗る資格はないと思います。

日本テレビの声明

NNNでは、多くの尊い命が奪われた今回の事件の真実性を保ち正しく伝えるため、そしてこの事実の重みを社会全体で共有するためには実名報道が必要だと判断しました。被害に遭われた方々やご遺族の方々のプライバシーに最大限配慮した取材、報道に努めてまいります。

引用:NEWS ZEROでのコメント

「多くの尊い命が奪われた今回の事件の真実性を保ち正しく伝えるため…」と書いてありますが、

被害者の実名公表が行われなければ、あの事件が嘘だった思いますか?

もし真実性を担保するのであれば、被害者の実名ではなく、記者やカメラマン、報道の責任者の実名を公開すべきだと思います。

 

また、「事実の重みを社会全体で共有するため」に実名報道が必要というのもおかしな話ですよね。

被害者の実名が報じられなければ、事件は軽くみられるということでしょうか。

そんなことないはずです。

35名がなくなった京アニ放火事件。誰もが事件の重大さを認識しているはずです。

毎日新聞の声明について

毎日新聞は、事件や事故の犠牲者について実名での報道を原則としています。亡くなった方々の氏名を含め正確な事実を報じることが、事件の全貌を社会が共有するための出発点として必要だと考えます。遺族の皆様への取材に関しては、そのご意向に十分配慮し、節度を守ります。

引用:毎日新聞

「亡くなった方々の氏名を含め正確な事実を報じることが、事件の全貌を社会が共有するための出発点として必要だと考えます。」とありますが、

事件の全貌を社会が共有するためであれば、亡くなった被害者の尊厳や遺族の方々の意向はないがしろにされてもいいということでしょうか。

大勢の利益になるならば、少数の望みや願いは犠牲になっても構わないというのは、おかしな論理です。

 

もちろん被害者遺族が実名公表に同意している場合は、遺族の心情に十分に配慮しつつ、報道するのは問題ないと思います。

ただし、遺族が実名公表に同意していない事件被害者の実名に関しては、実名報道はするべきではなかったはずです。

報道の原則

そもそも報道には原則が存在します。

それは、「公益性が存在する場合」です。

公益性とは、多くの人の利益になるかどうか。

 

例えば、事件の加害者の実名は誰かが知りたいと思っており、一定の公益性が存在すると言えます。

芸能人のスキャンダルなどは是非が分かれると思いますが、公益性があると考える人もいるでしょう。

しかし、今回の事件の被害者の名前については、公益性はあるでしょうか?

被害者の名前を知ったところで、誰が得をするでしょうか?

ほとんどの人にとっては、なんの特にもならないはずです。

 

ですから、本来マスコミが主張する公益性に基づく被害者の実名公表というのは、まったく見当違いな意見なのです。

実名公表にはもともと反対の声が多かった

実は事件の被害者の実名公表には、以前から反対の声が多かったのです。

さらに、被害者の実名公表には反対運動が起きており、すでに1万5000人弱の署名が集まっていました。

今回の実名公表は、その署名が提出される前日に起きた出来事です。

なぜ同意なき実名公表は起きたのか?

ここで一つ疑問です。

被害者遺族が同意もしていないし、反対の声も多かったにも関わらず、なぜ京都府警は実名公表をしてしまったのか。

実はその裏側には、新聞業界の圧力がありました。

 

当初京都府警は、事件の被害者は原則実名公表としながらも、

残る25名の被害者の遺族に対しては、実名公表について説明を行い、ご理解いただけるよう努力していくとしていました。

つまり実名公表を承諾してもらった人だけ実名公表し、承諾を得ていない人は実名公表をしない方針でいたのです。

 

しかし、8月20日、事態は急展開を迎えます。

京都府内の報道12社でつくる在洛新聞放送編集責任者会議は、犠牲になった35人のうち25人の身元を発表していない府警に対し、速やかな公表を求める申し入れ書を提出したのです。

つまり、京都のマスコミ12社が徒党を組んで、

被害者の実名を速やかに公表し、身元情報をマスコミ各社に渡せと、警察に要求したわけです。

 

その結果、どうなったか。

これまで遺族が実名公表を希望しない場合には、理解してもらえるよう「説明努力」をする方針だった京都府警は、

手のひらを返す形で当初自分たちが言っていた「説明努力」をあっさり放棄してしまいました。

京都府警は被害者遺族らの意向を無視する形で、マスコミ各社の要求を鵜呑みしてしまったのです。

 

 

なぜ京都府警は新聞各社の要求を飲んでしまったのか。

これには2つの理由が考えられます。

  • 新聞各社が京都府警のなんらかの弱みを握っていた
  • 実名公表反対署名の提出日が迫っていた

 

京都府警がマスコミに弱みを握られていた可能性

実は京都府警は昔から問題がある組織と言われています。

「京都府警 不祥事」で検索すると数多くの不祥事・事件が出てきます。

そんないわくつきの京都府警、実はまだ表に出ていない不祥事があっても、不思議ではないはず。

そして、相手はマスコミ12社。

その12社の中になんらかのスクープを握っている会社があってもおかしくありません。

マスコミを敵に回さないように、今後警察に不利な情報を報道されないように、マスコミに忖度した可能性が考えられます。

 

実名公表反対署名の提出日に焦った可能性

そして、もう一つ考えられるのが、署名活動に対する焦り。

先ほども言ったように、被害者の実名公表には反対運動が起きており、すでに1万5000人弱の署名が集まっていました。

 

考えてみてください。

一度署名が提出されてしまえば、実名公表に踏み切るのは難しくなります。

なぜなら、実名公表を望まない人の署名が提出された状態では、「事件の全貌を明らかにする」「公益性の高い情報だから公開すべき」といった実名公表の大義名分が使えなくなってしまうから。

そして今回の実名公表は、実名公表反対署名の提出日の前日に行われているという点にも注目してください。

 

署名提出までの期間、京都府警はギリギリまで考えたことでしょう。

でも、時間が経てば経つほど、マスコミの肩を持つのは難しくなる。

被害者の人権と遺族の意向を尊重するか、マスコミの味方をして権力の保身に走るか。

悩んだ挙句、最後はマスコミの圧力に屈してしまったのかもしれません。

 

京都府警としては、一応「最後の葬儀を終えたタイミング」としていますが、

  • 新聞各社の要求があったこと
  • 実名公表反対署名の提出日の前日に実名公表が行われた

上記の点を考えると、かなり言い訳がましく聞こえても無理はないと思います。

実名公表を受けてネット上では非難の声が相次ぐ

今回の実名公表を受けて、ネット上では非難の声が相次ぎました。

実名報道による実害の危険性を訴える意見や、遺族の意向を無視した対応に疑問視する声が相次ぎました。

また、記者の実名を出すべきとの意見や、実名報道はそもそも時代に則さないという意見も見かけられました。

特にチャンネル登録者数130万人以上のメンタリストDaiGoさんの実名報道に対する意見動画は、8/29日現在で312万回再生となり、SNSなどで瞬く間に拡散されました。

メンタリストDaiGoさんの動画は、私もよく見ているのですが、

彼がここまで感情的になったのは初めて見ました。

 

私も今回の一件には、流石に我慢ならなくなり、ツイートを出しました。

悲しみや怒りも感じましたし、日本社会そのものが、重要な分岐点を間違えてしまったのではないかと思います。

今後日本の未来がどんどん暗い社会になってしまいそうな、そんな印象を感じました。

実名公表で誰が得をするのか

京都アニメーションを始め、多くの人が望んでいなかった実名公表。

実名公表で、一体誰が得をするでしょうか?

「マスコミ」です。

 

被害者の実名が公開されれば、一人一人のエピソードを新聞記事やネットニュース、テレビの放送で公開することができます。

例えば、実名公表に同意していた10人分の記事しか書けなかったのが、今回の実名公表でさらに25人分の記事を書くことができるようになったのです。

 

つまり、実名公表されたことで、記事の情報量や報道のコンテンツとして、大きくボリュームを増やすことができる。

これは、記事のアクセス数とテレビの視聴率を稼ぐことに繋がります。

当然、記事のアクセス数が増えればサイトに掲載している広告の収益も伸びますし、

テレビの視聴率が稼げれば、新たなスポンサーの獲得にも繋がります。

 

一言でまとめます。

実名報道は、マスコミがマスコミのために、金目当てで行われたものであると言えます。

今後の日本は事件被害者のプライバシーが守られない社会になる

今回の一件で、今後の日本は、事件被害者のプライバシーが守られない国になります。

 

例えば、事件の被害者の実名や身元が本人や遺族の同意なく公開され、「プライバシーの侵害」を訴えたとしても、

「過去の京都アニメーション放火事件では、全ての被害者が実名公開されました。前例がありますよね」と言われ、跳ね除けられてしまいます。

 

裁判というのは、過去の先例を見て判決を下すことが多いため、

今回の実名公表によって、日本国民は、事件被害者の尊厳やその遺族のプライバシーを守る手段を失ってしまったのです。

マスコミが社会全体を操るディストピア社会の到来

今回の一件で「各社が集まって圧力をかければ警察は動く」という先例を作ってしまったので、マスコミの暴走はますます加速すると思います。

報道機関や警察の権力によって、公益性の名の下に、個人の意思や尊厳がないがしろにされる社会になるかもしれません。

 

今回の実名公表によって明らかになったのは、マスコミの倫理観の欠如。

新聞業界をはじめとするマスコミ各社が、アクセス数・視聴率優先、収益第一で報道していることがあらわになりました。

報道の前に大切な、人としての倫理や道徳観が日本のマスコミにはありません。

 

利益追及に走るマスコミを抑制する最後の頼みの綱が京都府警だったわけですが、その京都府警すらもマスコミ側になびいてしまった。

マスコミが「知る権利」を主張すれば、個人の意思も権利も無視できてしまうわけです。

マスコミを止めるものは誰もいなくなってしまいました。

その先に待っているのは、マスコミが社会全体を操るディストピア社会だと思います。

今後の日本の未来は暗い

マスメディアは、マス=大衆の報道機関ではなくなり、利益のために既得権益を振りかざすだけの組織に成り果てました。

新聞もテレビも、今後は自分たちにとって都合の良い報道をし、その一方で個人の権利と尊厳は徐々に弱くなっていくでしょう。

 

私はこの国に留まるのはもう嫌なので、海外移住の準備を進めているところです。

国を選ばず自由に働けるようになるには、現実的には、数年の期間はかかるはずです。

ただ、今回の一件で、この国に長く留まるのはリスクが大きすぎると思ったので、なるべく早いうちに海外移住するつもりです。

参考記事

下記、参考記事になります。

身元公表の申し入れ

身元公表で申し入れ=京アニ事件で報道各社-京都

在洛新聞放送編集責任者会議とは

在洛新聞放送編集責任者会議 – フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

マスコミ各社の声明

京アニ被害者の「実名報道」。テレビと新聞はどう報じたか

京都アニメーションの声明

京アニ代理人、25人公表・報道に「大変遺憾」 「一部ご遺族の意向に関わらず…」

メディアスクラム(集団的過熱取材)について

メディアスクラムで壊される犯罪被害者・加害者家族の日常

 

マスコミと一緒にされたくないので、この記事では全ての広告をカットしました。

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